技術討論会を行いました。

2021/11/27 エンジニアコラム

日本大学工学部 土木工学科 環境生態工学研究室 中野和典教授(農学博士)と櫻エンジニアリングとの技術討論会を令和3年11月26日に行いました。中野教授との共同研究会は8月末に行った「郡山市湖南浄化センター敷地内・多段型人工湿地実証実験見学会」に引き続き第2回目であります。
今回のテーマは、「既設汚水処理施設のグリーンインフラ化について」です。前回の共同研究会で見学してきました人工湿地を、農業集落排水の再構築事業に取入れていく事への利点や可能性について技術討論会を行いました。
農業集落排水事業は、その多くが1990年頃からの10年間で急速に整備されたため、整備から20年以上経過した老朽化施設が多く、施設の更新を迫られています。農業集落排水事業は汚泥の循環利用率の問題・処理費用の削減等、諸問題を抱えています。その更新に於いては汚泥処理の簡易化と処理費用の削減を実現出来る手法が必要であると技術討論会冒頭に中野教授からお話がありました。
農業集落排水施設の更新に於ける後継手法として、植物を育てる水や肥料の替わりとして汚水と汚泥を有効利用する多段型人工湿地であれば、農村地域の生活排水処理施設のCO2の削減や汚泥や処理水の循環利用に有効であり、コストの削減も図られると考えられるとともに、良好な自然環境や景観・生物の生息地・環境教育の場を提供する等の機能が発揮され、農業集落排水処理施設のグリーンインフラ化が期待されます。
また、多段型人工湿地での用地不足問題に対しては、鉛直方向にろ床を設置する「重層型人工湿地」を活用すれば圧倒的な用地面積の縮小が図られ、用地問題を解決するであろうとの考え方が示されました。
既存集落排水処理施設の活性汚泥槽内に重層型人工湿地を設置する方法であれば、新たな用地の確保や掘削工事等が不要となり既存施設の有効利用に繋がり、施設更新費用を削減できると考えられ、今後は更新集落排水施設を利用しての実証実験等が行えればとの意見が交わされました。

8/27人工湿地見学資料からの抜粋資料

日本大学工学部土木工学部科 卒研生作成

11/26技術討論会風景

左から大島・中野教授(農学博士)・吉野(技術士下水道)

多段型人工湿地と重層型人工湿地の概要

日本大学工学部土木工学部科 卒研生作成

今後は、人工構造物により作られ高い機能を有する従来インフラと、自然環境が有する機能を利用し低コストであり自然と共生するグリーンインフラとの、適切なハイブリット化が様々なインフラ構築で求められていく時代となると考えられます。中野教授との共同研究会を継続し、実証実験や実際のインフラ設計に於いて建設コンサルタントとしての技術と知識を提供し、住み続けられるまちづくりを実現していきたいと考えます。

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